今回は、人工知能を活用したデジタルマーケティングソリューションを提供するために設立されたRappaの代表取締役社長 斎藤匠さんに人工知能を搭載したロボット「Kibiro(キビロ)」と健康情報メディア「健康じまん.com」について話を伺いました。

個人の好みを学習してレコメンドしてくれるKibiro(キビロ)

Q:Kibiro(キビロ)のキーワードは何でしょうか?
A:一番のキーワードは人工知能です。もともと、Rappaの親会社であるUBICはリーガルテクノロジーの分野のソリューションを提供しています。UBICでは、弁護士の暗黙知を解析する人工知能「KIBIT」を開発しており、その人工知能が学ぶ対象を「リーガルの分野から他の分野、例えばお医者さんや個人一人ひとりなどに変えたらどうなるのか?」というところから各分野への展開を図っています。Rappaでは特に個人に着目し、個人の好みを学ぶことで、マーケティングに役立てることを目指しています。

Rappaが用いる人工知能技術が得意なのは、テキストデータの解析です。我々の人工知能は大量のテキストデータから、人の好みや判断を学習して、データを評価することができるのが強みです。しかし、人工知能によるデータの解析ができたとしても、一般の方には伝わりにくいという状況がありました。それを解決するために「一般の消費者の好みを自然な形で学ぶことができて、解析のデータを伝えることができる、伝導率の高いものはなんだろう」と考え、ロボットのKibiro(キビロ)を作ることにしました。

ロボットの本体は、ヴイストン株式会社が製作したもので、我々は人工知能の部分を担っています。我々は人工知能技術を社会でもっと広く活用していくことを目指しており、そのインターフェースの1つとしてロボットが最適だと考えています。

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図1:Kibiro(キビロ)

独自のアルゴリズム「Landscaping」

Q:独自の人工知能技術KIBITの特徴は何でしょうか?
A:人工知能「KIBIT」は、Landscapingというアルゴリズムと行動情報科学を組み合わせ、網羅性の高さを強みとしています。リーガルの分野は抜け漏れがダメな世界で情報の網羅性がとても重要なため、サポートベクターマシンやベイズ推定などのアルゴリズムやディープラーニングも試したのですが、要件にマッチしなかったため、独自の人工知能を開発しました。

また、訴訟の世界では、案件ごとに要件がかなり異なり、学習させるデータが少ないケースが多々あります。そのため少ないデータでも汎用的な特徴を見いだすことができるのもKIBITの特徴です。

他のロボットを見たときに、現状では多くのデータからパターンマッチングしていくのが多く、ユーザごとに個別化された人工知能はないと考えています。我々の人工知能は、Web上のデータを読み込んでいって、ユーザが入力したデータ(好み)とマッチングしていき、興味のあるデータをユーザごとに出し分けることができます。また、我々は10年以上テキストデータ技術に関わっていますので、人間の考えや行動をモデル化する「行動情報科学」の研究も独自に行っています。

例えば、ユーザがAというレストランが好きという情報がインプットされたら、そのレストランAの口コミデータを分析して、価値の判断を行い、その人の好みの価値基準に合うレストランBをレコメンドすることができるのです。

Q:今後のKibiroの展開について教えてください。
A:最終的なゴールは一般家庭への普及です。まずロボットが家庭に入るには様々な情報を扱うことができ、出し分ける必要があります。そのゴールへ向けたアプローチとして、様々な施設にKibiroを置かせてもらいデータを集めています。それらの施設にユーザは目的を持ってやってきますので、その目的に応じた会話とレコメンドを実現し、最終的に統合していく予定です。

施設にはKibiroとタブレットを一緒に設置して、音声認識の他にタブレット端末から好みを入力してKibiroがレコメンドしてくれる形で提供していきます。

図1
図2:テキストを解析してマッチする情報を評価

人工知能の修行場

Q:Rappaでは健康じまん.comというサイトも立ち上げています。その狙いはどこにあるのでしょうか?
A:我々は他のWebサイトでも利用できる汎用的な人工知能のコア部分の開発をしています。その人工知能のコアとなる部分に、それぞれのジャンルに合ったカスタマイズをすることが可能です。

しかし、人工知能が学ぶデータを持っていないと研究開発ができず、ユーザさんの声を直接聞くことも難しいという現状がありました。そこで自分たちで健康じまん.comというサービスを立ち上げ、人工知能KIBITが学ぶためのデータを集め、KIBITの性能をブラッシュアップしていくという狙いがあります。現在は人工知能の修行場として運用していますが、今後はデータ解析をして、人工知能によるレコメンド機能を付与していく予定です。

Web上のテキストデータというのは、Webメディアの情報とユーザが作り出す情報(CGM)のどちらかと考えています。健康じまん.comではその両方の情報を持っています。そのデータ解析をすることができれば、健康などのジャンルに関わらず、様々なWebサイトのデータ解析に使うことができると考えています。

ロボットが日常生活に入ってくる時代がもうすぐそこまできています。その時に、人工知能の性能はロボットの差別化の1つの指針となりそうです。また、人工知能が成長していくには、入力データが必要です。もっと人工知能に一般の人が触れる機会が増えると、人工知能の開発が一気に進みそうです。そのような機会がもっと増えると良いと感じました。