今回は、産業用ロボットコントローラーを作っている株式会社MUJIN最高経営責任者(CEO) 滝野 一征さんに、MUJINコントローラの特徴や技術について話を伺いました。

ロボットが賢くなるMUJINコントローラ

Q:産業用ロボットのコントローラー「MUJINコントローラ」のキーワードは何でしょうか?
A:ロボットの動作の自動生成です。従来ロボットは、ティーチングしたことをそのまま繰り返すというもので(ティーチングプレイバック方式)、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。皆さんが思っているようなロボットというよりも、機械に近い役割なのが従来のロボットです。

ティーチングしたことしかできないとそのロボットが使える場所が相当限られます。例えば、部品を決まった場所に配置するのがロボットの場合、部品や配置、状況などが少しでも変わると、全部ティーチングし直す必要があります。これが実は産業用ロボットの普及が遅れている理由でもあります。

また、ティーチングも複雑な操作盤や用語があるため、一般の方には難しくプロじゃないとできないという現状があります。つまり、ティーチングが簡単にできて、しかもロボットがちょっと賢くなって、例えば自動で障害物を避けたりとか、自分で動けるようになる必要があるのです。

ロボットというのは鉄とモーターの塊なのですが、そのモーターをいかに動かすかというのがロボット普及のキーになります。簡単にティーチングできて、ロボットが自分で考えて自分で動けると、そういう時代が来ることが大事なのです。それを担うのが我々のMUJINコントローラになります。動作の自動生成や産業用ロボットに必要な専門的な知識・機能が詰まっており、我々のMUJINコントローラをつけるとロボットが賢くなります。

MUJINコントローラで賢くなる産業用ロボット
図1:MUJINコントローラで賢くなる産業用ロボット

どのロボットでも同じようにティーチングができる

Q:MUJINコントローラの特徴は何でしょうか?
A:
従来の製品に追加して使うことができるのが特徴です。携帯の世界のAndroidみたいなものですね。プラットフォームと考えていただければと思います。それもキラーアプリケーションが載っているプラットフォームです。

携帯の世界もキャリアやメーカごとにプラットフォームや開発言語など中身が全然違っていましたが、どの機械でも動くAndroidが登場して、メーカは当初差別化ポイントが減るので嫌がっていましたが、Androidのおかげでお客さんが使いやすくなって、インタフェースも共通化できて、携帯が賢くなりました。携帯自体の市場も5倍ぐらい増えたんですよ。

今、産業用ロボットもそのような時代に突入していて、安川電機、三菱電機、デンソーウェーブ、全部バラバラのプラットフォームで言語も違っているため、ティーチングがとても大変なんですね。我々のMUJINコントローラーは全部のロボットに使うことができ、ティーチングが共通化されるのでティーチングがしやすくなります。さらに3Dビジョンをつけるとロボットが自分で見て動けるようになります。

我々は、ソフトウェアだけでなくてコントローラーを専用機器として販売しています。例えば、ファナックの工作機械用のCNC(コンピュータ数値制御)のロボットバージョンです。ファナックは、NC(Numerical Controller)ですが、我々のMujinコントローラーはRC(Robot Controller)となります。

Q:Mujinコントローラーのテクノロジーについて教えてください。
A:
大元はOpenRaveですが、現在のMujinコントローラー全体の20%ぐらいの割合で、80%は我々独自のテクノロジーです。OpenRaveはあくまで学術的な方程式による動作生成エンジンですので、現場での動作は実際には異なっているため、かなりのカスタマイズが必要になります。基本的な技術としては逆運動学とモーションプランニングがあります。逆運動学がロボットの運動学を解析する技術で、モーションプランニングがその軌跡を生成する技術です。

また、我々は他の会社でできないバールピッキングのチューニング技術があるため、産業用ロボットを提供している会社から特別に情報を開示してもらっています。

プロセス図
図2:プロセス図

ロボットの普及に大切なのはロボット制御の容易さ

Q:今後、力を入れていきたいサービスや機能について教えてください。
A:我々はロボットベンチャーと言われますが、実はロボットは作ってないんですね。ロボットを賢くするロボットコントローラーを作っていて、それを様々なロボットメーカーさんにOEMしていきたいと思っています。

またロボットをたくさんの人に使ってもらいたいですし、もっとたくさんのロボットメーカーが出てきてほしいですね。そのためにはロボットの自体の問題ではなくて、ロボットをどうコントロールするか? という点を簡単に提供できることが大切だと考えています。新しく産業用ロボットを作りたいお客様の中には、ロボット自体は作れるけれど制御方法が難しすぎてわからないケースが多いので、ぜひ我々のコントローラーを使っていただきたいですね。

最近は中国の新規のロボットメーカーさんが多いですね。アメリカなどもありますが、数としては今は中国が一番多く需要があるんですが、我々のデリバリーと開発がスピードが追いついていない状態です。ロボット工学わかる人やWebGLなどのエンジニアが足りていないので、今後増やしていきたいですね。

ありがとうございました。

産業用ロボットのコントローラーというと、なかなかイメージが湧きにくい分野ですが、Androidなどわかりやすい説明をしていただき、今後大きく成長しそうな分野であることがわかりました。海外からも注目されているMUJINコントローラの将来が楽しみですね。